(学)長橋学園 杉田幼稚園
佐野牧夫
杉田幼稚園は、市部郊外の緑豊かな富士宮市杉田の地に在り、昭和54年4月に同地区内の民間保育所の廃園に伴い、地域の皆様からの強い要請によって誕生しました。 当園を訪れる際、まず、園門脇にある「二宮金次郎(尊徳)像」が眼に入ります。最近の幼稚園には珍しい金次郎像ですが、本園創始者が「こんな子どもになって欲しい。」という願いを込め、「明るく元気に頑張る子」を園目標に据えて、その道徳性の芽生えを養うために建立したものです。 こうした背景の中で、本園の教育活動は「社会に開かれた教育課程の実現」を目指し、『共感し合える保育者と保護者・地域との関係づくり』への取組みをしており、特に、地域の教育力を存分に生かして、園児一人一人が「モノづくり」などを通じ、豊かな生活体験(学園行事等)を積んで行く所に重点を置いております。 当地域は、富士山の恵みによる地形・地質に適した農作物の栽培が盛んで、園の隣にも「さつま芋、落花生、お茶」などの畑が広がっており、年間を通じ、植物の育ちを学びながら収穫の喜びを体験できる環境にあります。 そのため、園の誕生当時から、さつま芋や落花生栽培に取組んでおり、地域に在住の当園PTA会長(専業農家)の畑で、毎年、会長の指導により、年長児が八十八夜が終わった頃に「さつま芋と落花生」のつる挿し・種まきを行い、秋には園児全員が参加する「さつま芋・落花生掘り」を体験します。各学年とも“思い出のさつま芋・落花生掘り”の絵を書き、壁に貼った絵を、みんなで鑑賞しています。特に、収穫した落花生は、園児たちが家に持ち帰り、特産の「ゆで落花生」として家族みんなで味わっております。 また、地域の農業団体の指導と稲作材料(稲苗・肥料・土)の提供を受けて、年長児が「バケツによる稲作(もち米)」を行い、夏の初めに植えた稲が実った秋には、保護者と一緒に稲払い(脱穀)に挑戦します。 その収穫したもち米を使って、地域の農業団体青壮年部の支援・協力による「餅つき」(全園児参加)があります。今年はコロナ感染防止対応で、例年よりもち米の量も減じ、保護者の応援も無しにした上に、自分で作った餅も食べることができないため、「どのような形で子どもたちに“安全な餅つき体験”をさせることができるか。」を教職員で話し合い、「杵による餅つき」と「飾り鏡もちづくり」を体験することが決まりました。初めての「鏡もちづくり」は、クラス対抗の形をとって行い、各クラス自慢の飾りを施した鏡もちが完成し、園児たちの歓声が上がり、地域の正月行事を無事に体験することができました。 また、年長児の卒園記念の一環として、茶処にふさわしい「茶道体験教室」(2月~3月)を開いています。伝統文化に触れ、「和の心」や「思いやりの心」を育成することを主眼とし、地元の茶道家団体の皆様の協力を頂き、抹茶やお菓子(富士山の焼印)を味わいながら、お茶の作法も学んでいます。 さらに、モノづくり”への基礎となる体験学習として、自分達が収穫したジャガイモを使い、「年長児の保護者(PTA役員)の参加による「親子カレーづくり体験教室(「みんなで楽しく!カレーパーティ―」~野菜サラダも作るよ!)」を、LPガス団体や地元ガス業者の協力を仰いで実施しております。 こうした地域の方との交流は、毎年の「杉の子フェスタ(園の夏祭り)」への区民招待<今年中止>、地区敬老会での歌や合奏披露<今年中止>などもあります。 このように、当園の老園長は、地域とともに歩みながら、園児たちと楽しい日々を送り、さらなる教育活動の充実に向けた園運営に努めております。