田んぼの幼稚園

20170501 西富士宮(大)

西富士宮幼稚園

矢部理恵子

  「園長先生、子ども達はいつから来るの?」4月になり、子ども達を迎える準備をしていると、ご近所のお年寄りが声をかけてくれました。「明日から…、明日入園式です。少しにぎやかになりますが、よろしくお願いします。」と応えると、「春休み中は子どもの声が聞こえなくて寂しかったよ。これから楽しくなるね。」とお話が始まり、いろいろなことを話してくださいました。「子ども達の歌やマーチングを毎日のように聞いていると、5月より6月、6月より7月とだんだん上手になっていくのが分かるのよ。運動会や発表会の前になると、私も家にいて一緒に口ずさんでしまうわ。今年はどんな曲をやるのか楽しみにしているのよ。」と言いながら片づけを手伝ってくださいました。
 「田んぼの幼稚園」創立から62年。創立当時は周りのほとんどが田んぼだったので、年配の方々にはそう呼ばれています。今では、住宅や商業施設が多くなって、近くに田んぼを見つけることが難しくなりました。
 現在通園している園児の中には、その父母、そして祖父母と3世代にわたりこの園舎の門をくぐり、園庭で遊び、卒園証書を手にしたという家庭が少なくありません。周りの様子にはもう「田んぼの幼稚園」の面影はありませんが、家の人に手を引かれ徒歩で登園する園児の姿は今も変わっていません。
 以前、保育園や幼稚園の建設が地域住民の理解が得られず、完成に至らなかった、という記事を目にしたことがあります。人々の生活スタイルや考え方の違いでしょうか。私自身複雑な思いを拭えませんでした。
 「おばあちゃん、今年の合唱の出来ばえをまた聞かせてくださいね!」
4月の泣きさけぶ声(母親から離れられず)から、明るい挨拶の声、元気な歓声、優しい歌声へと、地域の皆様に見守られながら子ども達の成長のお手伝いをしていきたいと思います。