お客様ごっこ(作法)

26年4月写真

みなと幼稚園・みやじま幼稚園 

園長 小関 ハツ江

 私は、入園した日から卒園の日まで常に「目と目と握手」を連発する。そして、「子どもは耳で聴くのでなく、目で聴くんだよ。そうすると、おりこうさんになるんだよ。」と語り掛ける。
 私たちの幼児期には、ほとんどの家でテーブルとは言わず「ちゃぶだい」と言う、座って食べる食卓で三度の食事をいただいた。父もしっかり座っていた。かしこまるといいましょうか、何か話しをし合うのもその食卓の周りであった。何となく落ちついて目線を合わせ易かった。時には丸い「ちゃぶだい」で家族5人がじゃんけんをして、勝った者順に包丁で切ったスイカなどを大きい物から手に取ったり……。いろいろな家族が団欒をしたものだった。もちろん、部屋と言おうか座敷と言おうか、生活の場が畳だったので自然に座る体勢になるのだ。その空間がゆったりとして落ち着くのであった。その座る時間が少なくなったために、いろいろなことが変わってきているように思うことがしばしばある。現代では座って礼(お辞儀)をすることはほとんどない。しかし、日本人として正月のおもてなし(・・・・・)は畳に手をやり礼(お辞儀)をしたいものだ。古来の風習を正月くらい味わうことは、誇りある日本人として身に付けさせていきたいと思う。人を敬い静かな動きで客と向き合い、父、母と向き合うことを怠ってはいけない。それにはやはり、幼い頃からの躾が大事である。
 
子どもたちが落ち着いてくる時期になると、全クラスの一人ひとりの子に向き合うことにしている。そのお茶とお菓子をいただきながらの「作法」の時間を、子どもたちには「お客様ごっこ」と言っている。もう20年くらい続けている。作法は座ることの必要性を子どもに会得させたいと思い始めた。話の内容は「命」についてである。「自分の命」はお墓の祖先から受け継いで、自分が存在していること。「自分の命」は父母からは間違いないが、もっと昔の祖先から脈々と続いていて「自分」があること。「自分」とはそうした人々から生かされていることなど、「命の継承」について説いていきたい。軽はずみに命を考えてはいけない。「君が交通事故で死んでしまったら、どれだけの祖先の人々が悲しがることか……。」命の重さというか尊さを話していきたい。そして、その教えと共に静かに聴く態度、静かに考える力を少しずつ身に付けさせたい。