「かめさんおさきに」

「かめさんおさきに」

学校法人山名学園山名幼稚園
諸井理恵

 「うさぎとかめ」のお話でおなじみのカメは、足の遅い動物として有名です。誰もが憧れるスーパーヒーローの話は、魅力的ではありますが、未成熟な子どもたちにとって自分に重ね合わせて味わえるお話というのは、どこか「欠け」や足りていないことがある方が物語の主人公として共感を持てるでしょう。  最近、私が作ったお話「かめさんおさきに」は、そんなおなじみの足の遅いカメを主人公にしました。お話は、今晩、丘の上にいくと素敵なことがあるらしいということを聞きつけたカメが丘の上を目指して歩きだすところから始まります。途中、カルガモ、モグラ、カエル、カニに追い越されていきます。ここまでお話を作って、カメより遅い動物は何だろう?と考えました。そこで登場させたのは、おなじみのカタツムリです。このカタツムリも同じように丘の上を目指しています。でも、カタツムリがカメに伝えた言葉は、「行けるところまで行く」というものでした。この言葉を聞いて、カメは言いました。「素敵なことに出会えるといいね。カタツムリさんお先に」そう言って、カメはカタツムリを追い越していくのです。私は、このシーンのもう一つのストーリーを考えました。カメがカタツムリを背中に乗せて丘の上まで一緒に行くというストーリーです。でも、そのストーリーは選びませんでした。心やさしきカメを描きたいのであればそれもいいでしょう。カタツムリも「ではお言葉に甘えて」と乗っかったかもしれません。おなじみの「うさぎとかめ」のお話は、油断大敵、ゴールを目指してコツコツ積み重ねたものが最後は勝つといったメッセージがあります。時代は変わり、はたして「競争して勝つことが価値なのか?」という問いが今の時代を生きる人たちの目の前に現れたと思います。「かめさんおさきに」は、競争を描きませんでした。見たい風景を目指してそれぞれが歩いていく姿を表現しました。  さて、最後はどんな結末でしょう?お時間があれば、動画リンクへぜひどうぞ。 絵・諸井まり 作・もろいりえ 絵本よみきかせ「かめさんおさきに」 https://youtu.be/HVZEUuD480g

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